最近流行っているマイクロ法人スキームを見ていて思うのは、法人住民税の均等割の取扱いです。
会社の税金計算上、経費になりません(※「損金不算入」といいます)。
というわけで、受取配当益金不算入制度を使って配当金の一部(20%相当)を益金不算入にして相殺する話です。
計算上は、利回り5%の配当金なら元本として国内株式が700万円必要になります。
今回は、マイクロ法人の収入を資産運用で用意する方向けの話です。
均等割は損金不算入
会社の税金の1つに、法人住民税の均等割があります。
黒字はもちろん、赤字でも、会社を運営している限り、必ずかかります。
いわばショバ代です。
しかしこの均等割、税金の計算上、経費になりません。
※「経費」という言葉を使うと混乱しやすいので、ここからは損金(そんきん)にならない(=損金不算入)という表現にします。
お金の動き
例えば利益7万円で手元に7万円が残ったとします。
均等割7万円を払うと、お金はなくなります。
- お金:7万円
- 均等割の支出:▲7万円
- 差引き:0円
税金の計算
しかし税金の計算上、均等割は損金になりません。
- 会社の利益(所得):7万円
- 均等割:0円(損金不算入)
- 差引き:7万円→税金がかかる
会社の利益から差し引けないので、残った利益7万円に税金がかかります。
お金は均等割を払って0円なのに、税金を払わないといけないという悲しい状態になります。
配当金の一部を益金不算入にして相殺
個人的には均等割が損金不算入なのは制度上、間違いではないかと思っています。
しかし、国に文句を言っても法律で決まっているので、できることをします。
真っ先に思いつくのは
お金をもらっても損金にならない(損金不算入)なら
お金をもらっても益金にならない(益金不算入)もの
と相殺しようということです。
益金というのは、損金の反対の言葉です。
税金の計算上、収入にならない(税金がかからない)という意味です。
お金をもらっても税金がかからないのでうれしい話です。
代表選手が国内株式の配当金です。
というか、他に選択肢がない。。。
受取配当益金不算入制度とは?
日本の上場企業は、法人税を引いた後の利益から配当をします。
その配当金をもらった自分の会社にも法人税がかかります。
1つの利益に対して法人税(上場企業)と法人税(自分の会社)の二重課税になるので、受取配当益金不算入制度で調整します。
- 上場企業:利益に法人税
- 株主(会社):配当金に法人税→一部課税しない(受取配当益金不算入)
ちなみに個人の場合は、法人税(上場企業)と所得税(自分)の二重課税を調整するために配当控除がありますね。
- 上場企業:利益に法人税
- 株主(個人):配当金に所得税→一部課税しない(配当控除)
どれくらい益金不算入になるかは、持株比率などで決まります。
例えば100%株式を持っている子会社からの配当は、配当金100%が税金の対象になりません。
一方、ふつうの会社は、上場企業の株式をたくさん持っているわけがないので
配当金の20%相当
が税金の対象外になります。
※非支配目的株式等(持株比率5%以下)
均等割と相殺するにはいくら必要か?
均等割7万円÷20%(受取配当配金不算入)=配当金35万円
配当金35万円÷利回り4~5%=国内株式700~875万円
利回り5%だと700万円なので、ちょうど均等割7万円の100倍ですね。
お金の動き
配当金が35万円、経費が28万円でお金が7万円残ったとします。
- 配当金:35万円
- 経費:28万円
- 利益:7万円→お金7万円
ここから均等割7万円を払うと、お金はなくなります。
- お金:7万円
- 均等割の支出:▲7万円
- 差引き:0円
税金の計算
均等割7万円が損金にならないのは同じですが、配当金35万円×20%(受取配当益金不算入)=7万円も益金になりません。
- 会社の利益(所得):7万円
- 配当金の20%相当:▲7万円(益金不算入)
- 均等割:0円(損金不算入)
- 差引き:0円
結果、差引きは0円です。
お金がないのに税金を支払う事態は回避できました。
外国株式やJ-REITは使えない点に注意
「国内株式よりも、外国株式(米国高配当株やETFとか)やJ-REITがいいな」
と思っている方もいるかもしれません。
残念ながら、この2つは使えません。
受取配当益金不算入制度は、日本国内の法人税と法人税の二重課税を調整するものなので、外国株式は関係ありません。
外国株式の場合、外国の税金と日本の法人税の二重課税がありますが、これは外国税額控除で調整されます。
- 外国企業:利益に外国の税金
- 株主(会社):配当に法人税→外国税額控除
J-REITは利益の9割超を投資家に還元することで法人税が非課税です。そのため、二重課税自体が起こらず調整がありません。
- J-REIT:非課税
- 株主(会社):配当に法人税
最後に
投資の観点からは、資産運用で収入を用意するにしても、全部を国内株式で持つのは収入源としては微妙ですね。
外国株式やJ-REITも含めて、長く続けられるポートフォリオにしたいところです。
例えば1,500万円を投資するなら
- 国内株式:700万円
- 外国株式・J-REIT:800万円
とかでしょうか。
まあ、今回は投資の話ではないのでこの辺で。
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